220分。石川県小松市より、新潟県長岡市へのバス移動に要する時間である。長時間ではあるが、決して稀ではなく、さらに長時間の移動などは旅にはつきものというものだ。日本海を左手に見ながらひたすら北上...。長岡到着時はすっかり夜となっていた。
一夜明け、旅公演の最後を飾る「見附市文化ホール」へ向かう。車道には消雪パイプが設置されてい、道路一面に錆びが流れ、赤茶色を帯びている。今は夏で当然雪もないけれど、雪国に来たのだと実感が湧いてくる。(雪は毎年50センチほど積り、結構降るとのことだ)
そして、見附市は繊維、特にニットの街であるそうだ。
見附市文化ホール。京都南座から初日があけた舞台 「東京物語」(山田洋次監督 演出)。千穐楽をいよいよこちらで迎えるのである。
楽日は初日ほどナーバスな雰囲気はなく、むしろここまで無事辿りついたという「おめでたい」雰囲気に包まれる。
「千穐楽おめでとうございます。」楽屋へのご挨拶を回りながら、ふと、稽古初日から今日までの道のりや出来事が、走馬灯の如く頭を過っていく・・・。
千穐楽という我々にとってのいわば、節目という思いがはたして舞台に表れたのであろうかどうか...。劇中あるいはカーテンコールでのお客様の反応は、とても素直かつダイレクトで、なによりも温かさを感じた。ご観劇頂きました皆様、本当にありがとうございました。
そして、無事ここまで舞台を務めさせて頂けたこと、本当に感謝致します。制作、演出、スタッフの皆様、そして各劇場の関係者様、本当にありがとうございました。お疲れ様でございました。
又、京都を含めたこの旅で、新たに様々な人々と出会えたことが、なによりの私の財産となった。ジンセイニカンパイ。
ホールを後にしようと楽屋口を出ると、西日になりかけた夏の日射しが、目の前に広がっている田圃に反射し、光のシートをつくっていた。眩いながらもその光景を見つめると、田圃は豊かに緑を増してい、だいぶ伸びた稲の長さが季節と時の経過をやさしく伝えてくれた。