舞台「東京物語」 旅公演初日。愛知県知立市。 ちょいと珍しい市名である。いわゆる三河地方に位置し、江戸時代は「池鯉鮒」と記したそうである。その昔、知立神社の池に鯉や鮒で溢れていたことがこの名の所以だそうである。(資料より)

 名古屋より車にて約50分、公演会場 「パティオ池鯉鮒」に到着。所々に田畑が目立つちょっとした田園風景の中に、それとはギャップを感じさせる程の公演会場であるこの近代的な建物は、それでいて場違いで傲慢にそびえ立っているのではなく、とてもやさしい存在感を放っている(少なくとも私にとってはこの光景が好印象である)。


 エントランスより建物の外観がガラス張り、ホールは赤いシートの客席で埋め尽くされ、壁は黒張り。客席全体がゆるやかなアーチを描いて舞台を望む二階建て。オケピ完備の近代的でシックな印象だ。演劇のみならず、秋にはクレイジーケンバンドさん、森山良子さんも企画されており、音楽コンサート会場としての性質も色強いが芸術の静寂な匂いも良立(両立)されているように感じる。


 「会場パッケージのギャップ」 ツアーでは毎回会場が変わっていく。どの会場も独自コンセプトの基に設計されてい、音楽コンサートを意識しているのか、あるいは演劇なのか、オールマイティであるとか...。昨日とはグラウンドコンディションが一変するのである。音(演劇であれば自分の声)がどれだけ通って行くのか、どのような感じで響くのか(反響の度合いなど)、あるいは音が吸われてしまうかetc...。演者にとってはデリケートな課題であり、開演前これらを独自にチェックしておくことが重要なことなのである(ミュージカルだといわゆる『音の返し』のチェック)。


 さてパティオ池鯉鮒公演。三河の気さくな気質(友人の言葉を借りる)が溢れているのであろうか、会場の反応はとてもダイレクトで小刻みであった。笑い、ため息などが舞台上、裏にまでビビットに伝わってくるのである。我々(少なくとも私は)にとってはとてもうれしい事であるとともに、気持ちも乗る、いや乗せられてしまうというものである。ヤクシャミョウリニツキル・・・。本当にお客様が温かかった。ありがとうございました。


 パティオには三河の象徴の一つである「山車」が展示されているのも印象的であった。
「おいでん」、「いこまい」...三河には面白い方言がたくさんあるとか...。
 今度は是非生で三河弁の響きを存分に浴びてみたいものである。