Travelin' Light.
■ しばらく東京を離れていた。
また出かけねばならないのだが、どこにいても回線が繋がっている限り昼間の厄介は追ってくる。
特定の回線を使わねば保守できないものなどはスタッフに頼み、数日したらまたここを離れねばならない。
旅といえば旅だし、仮住まいといえばそのようでもある。
■ あるとき、平野の夕暮れである。
向こう側に大きな月があらわれてそれが次第に昇ってくる。
私は小型の車を運転しながら、なにか別のことを考えていた。
それが何なのか、曖昧な形になろうとしたのは羽田から電車に乗って最寄のターミナルに着き、煙草が吸えるカフェに腰を下して辺りを見渡してからのことである。
確かこの辺りには打合せに通った会社があった。誰かと待ち合わせたのはこの先の店だし、坂を昇ったところにあるホテルに泊まってそれから別れた。
流行っていた曲は、などということは思い浮かばず、その頃、女性は今よりも煩雑にスカートを履いていた。
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