震えて眠れ | Newsletter No.008

 
    震えて眠れ。
 
 
 
■ 四月の雨である。
 薄い風邪が身体に入ったらしく、だるくて何にもしたくない。
 そうもいかないので、のろのろPCに向かっていた。
 
 
■ 作品の話を少し書いてみる。
 本MM「震えて眠れ」は、ご存知ブルックリン・ブリッジである。

Ghost Of A Chance,A' | Newsletter No.007

 
    老いた舞姫。
 
 
 
■ スプリング・コートを羽織った女性が、ブロード・ウェイから脇に入った路地でダンボールを蹴っている。
 始めはダンボールだけが動いているのが見えた。
 なんだろうといぶかしく、足がとまる。
 夜の十二時過ぎ。眼がなれてくると、そこに一人の女性がいて、それは老女と呼んでもいい横顔だった。白人らしい。
 子どもがサッカーのボールを追っていくかのように、彼女は飽きることなく茶褐色の箱を追いつめ、それをミドルのヒールで蹴っていく。靴はまだ新しい。
 結構な力が入っていて、踵が折れやしないか他人事ながら心配になった。
 ぽこん。ぽこん。しばらく置いて、ぽこん。
 いや、音には濁点がついていて、空きっ腹には少し堪えた。