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塩だ | Newsletter No.009

 
    塩だ。
 
 
 
■ いつだったか「シンデレラ・リバティー」という映画をみた。
 今からもう40年も前、1974年の作品である。
 ゴッド・ファーザーで好演したジェームス・カーンが、うら寂しい水兵の役を演じている。
 結婚もせず子どもも作らず、水兵のままでいい歳になってしまった男。
 他に行き場がなかった男。
 物語は、場末の酒場を稼ぎ場とする子持ちの娼婦と、帰港した水兵との交情を描いたものだが、どちらかと言えば、連れ子の混血少年との関係が主軸になっていた。
 擬似的な親子。父と息子との関係はいわく言いがたいものがあって、少年が11歳という設定が微妙なところだった。
 これが9歳でも16歳でもまた違った付き合いになっていただろう。
 可愛らしい顔の子役を使っていないところがちょっと苦い。
 魚釣りをしたり自転車で一緒に走ったり。男、水兵は擬似的な親父の役柄に次第に没頭していく。
 母親のことをひとりの女として眺めようと努力したり。背伸びをしていても、少年は少年である。

俺の領分 | Newsletter No.009

 
    俺の領分。
 
 
 
■ ブルックリンの酒場で知り合った退役軍人を部屋まで送っていって、これ以上立ち入るなと釘を刺される。
 元軍人が死に、その部屋を片付けると、そこは軍隊式に見事に生理整頓されていた。
 古い皮の鞄の中から写真と手紙の束が出てきた。
 そこにはよれよれになる前、凛々しい青年下士官と、東洋人と見受けられる女性の結婚式の写真が残っていた。
 ヨコスカ。と消印にはある。